ヅカオタがスリルミーを観に行った話

スリルミー感想!

ツイッターのお友達がチケットを用意してくれて観に行くことができました...ありがたや...

シアターウエスト、メインの女性用お手洗いが8個室しかなくてうお~!異文化!ってなりました。生息地が東京宝塚劇場なので。

外部の舞台観に行くといつも、うわ本当にキスしてる...って思います。今回も思いました。宝塚はキスしてるように見せる文化圏なので。

帰って調べたら客席数も195-270席って、今まで足を運んだ劇場の中で一番キャパが小さい!次点が花乃さんの朗読劇を聞きに行った三越劇場514席。チケット手配してくれたお友達に感謝...

---------------以下ネタバレ含む感想---------------

 

 


観劇後に一番感じたのは「私」に対するいたましさ。

何でだろうって考えてみたけど、多分全編を通じて、「彼」に負けるな~!って「私」のことを応援しながら観ていたからかなと。脳内「私」応援上映

それはある意味では子供を手にかけることを何とも思わない「彼」への生理的な嫌悪感と表裏だったのかなと。

司法取引のくだりではしてやったりと思ったり、「彼」の口車に乗せられては駄目~!とめちゃくちゃ「私」に肩入れしながら見てました。ニーチェの何章に書いてあった?!みたいに「私」が「彼」に詰め寄るところ、もっと言ったれ~~!!と思っていた。笑

独房で「彼」が死にたくない!と怯えるところ、普通の人間感が出ていてよかった。

「私」の前では虚勢を張ってるけど死ぬのは怖い「彼」。この後、二人でなら絞首刑になってもいいと思っていた「私」のヤバさが際立ちますね。このとき聞き入っている「私」の目が真っ黒で怖いと感じたんですけど、後から思い返したら大正解の感覚...。成河さんすごい。

「私」が口元ワナワナさせるところと、ラストで指を一本ずつほどくところが好きです。筋肉の不随意運動を起こせる役者が好き。(1789、悲しみの報いの歌い終わり、震える手で十字を切るアントワネット愛希れいか様~!)

「彼」は超人を自称する割には色々と甘い、社会主義かぶれの少年くらいに思いながら観ていたのですが、それも福士さんの役作りだったんだろうな。

「彼」が「私」のアリバイを考えるくだりでは、いやいや「私」は女の子ナンパしないし、なんなら童貞なのでそんな嘘すぐバレるわ...と思ってました。笑

護送車での種明かしのところ、「私」の思惑にすぐさまピンときて、(まだ気づかないのか...彼、鈍すぎでしょ...)と思っていたら「私」が「まだ分からないのか?」って言ったのでめちゃくちゃびっくりしました。思考がシンクロしてしまった。

種明かしの後で「彼」が赤背景の扉の前に立つところ、プライドの高い「彼」が車から飛び降りて死んでしまうのだと思いながら観ていました。違ったけど。このあたりからめちゃくちゃ死の気配を「彼」に感じました。


その場その場で力関係がぐるぐる入れ替わるのが面白かった。

ずっと「彼」が圧倒的優位で、「私」が自首するって言い出したときでさえ「彼」は自分の優位を疑っていない。司法取引を持ち出したときに「私」が優位に立つけどそれも一瞬のことで、すぐ「彼」に手なづけられてしまう。だからこそ種明かしがされたときの大大大逆転がすごかった!「彼」はずーっと「私」の手のひらの上だったんだって。

でも結局、ラストシーン、青い扉の前に立っている「彼」にスリルミー!って身を投げだすように手を差し伸べた「私」の姿が本当にいたましくて。「私」は永遠に求める側なんだなって思いました。

仮釈放が認められて、「じゆう...?」って白痴のようになる「私」。監獄の外の世界に全然魅力を見いだしていない。監獄の中、審理官に求められて、繰り返し「彼」との記憶を語ることこそが「私」を人間たらしめていたような。「彼」と過ごした監獄の中にこそ拠り所を感じているように見えました。

コインと、金の懐中時計と、そんなものには全然興味ないけど、19歳の「彼」の写真のことを思い出してすごく嬉しそうになる「私」。

死によって「彼」は自分を「私」から奪ってしまった。自分を「私」の手の届かないところに置くことで「彼」は永遠の優位に立ったんだなって思いました。永遠のおあずけ。

 

穿った見方かもしれませんが私はそんなふうに見ました!また結末知った上でも観たいし、違うキャストでも観たい。そんなふうに思える作品でした。

カーテンコール、神妙な顔で出てきてくれるの良いですね...物語の余韻に浸っていられる。

一回早く?スタンディングしたお客さんにびっくり顔を向ける成河さん。首元に手をやって(ネクタイがない~っていう仕草?)笑いが起こる成河さん。去り際手を振ってくれる福士さん。可愛かった~!

演者の視界に入ってしまうのではないかと身じろぎさえためらわれるような距離感。客席全体が舞台上の二人に集中している、ヒリヒリとした緊張感。劇場が賞賛に満ち溢れてる、カーテンコールの一体感。スリルミーが、成河さんが、福士さんのことが好きな人しかいないであろう空間。とても心地よかった!感動した!

職場の付き合いで来てるサラリーマンとか、奥さんに連れて来られて寝ているおじさんとか、携帯の切り方が分からなくて鳴らしちゃうおばあちゃんとか、開演後に入ってくる人とか、一人もいなかった。奇跡!

 

帰り道、天の声的(舞台上に不在)な裁判官に求められて犯罪の動機を語り出す成河さん、どこかでめちゃくちゃ観たことあるなと思ったらエリザベートでした。成河ルキーニとの出会いが今回のスリルミー観劇のきっかけの一つにもなったので、面白いものだなと思いながら帰りました。以上。